カワウの巣づくりから巣立ちまで

                                                   =東京都台東区不忍池=
 









   1.繁殖開始
     繁殖期が近づくと頭部に白い糸状の羽(繁殖羽)がはえそろいます.
    さらに、喉の色が黒ぽくなり、目の下に紅色の斑紋がでます.そして
    繁殖が始まり、その後、紅斑は10日たらずで、頭の繁殖羽は約1ヶ月
    で消失します.喉の色はその個体の繁殖活動の継続や中止の影響を
    受けて様々に変化するようです.
     なお、大きなコロニーでは群れの変化と時期のずれた個体がよく見
    られます。






 2.ディスプレイ
   オスの「翼打ち」ディスプレイ.そこの「場所を確保している」ことをメス
  に知らせています.1羽が始めると、競い合うように他のオスもよく始め
  ます.脚の位置に、巣ができます.メスや幼鳥も類似した行動をすること
  がありますが、その時は頸を斜め上に構え、尾を上に上げるこのディス
  プレイの典型的な姿勢にはなっていません.






  3.巣材運び
    園路にあるシダレヤナギの小枝を、嘴で
   くわえて頸をひねって折り、巣へ運びます.
   これはオスの仕事で、メスは巣の近くから
   まれに運ぶだけです.オスもメスも同じ仕
   事を半々にするカワウで、巣づくりは唯一
   分担が決まっている行動です.






   4.巣材渡し
     メスは巣で待っていて(巣を守っていて)、帰ったオスから巣材を受け
    取り、巣材と巣材をからめていきます。カワウの巣は雑そうに見えます
    が、結構しっかりしています.巣材の好みはなく、小枝から草(地面に
    降りても安全な場所なら)までさまざまで、そのコロニー付近で容易に
    集められそうな物を集めます.







 5.巣と卵
   カワウの卵は、鶏卵を2回り小さくしたくらいの大きさです.3〜4
  個を1日おきに産みますが、巣が浅い皿型である上に、水かきの
  上にのせて卵を暖めるため(抱卵斑はありません)、抱卵中に卵
  の減ることが多く、多くの巣では2〜3個を抱卵しています.巣の
  産座には、柔らかい物を敷き詰めます.カワウの羽(風切羽がほ
  とんどどの時期でも順次はえかわっているため、落ちています)、
  草類や木屑のようなものなどです.どのコロニーでも、ナイロン袋
  をよく持ち込んでいます.




  6.抱卵
    抱卵中は独特の姿勢をとり続けます.翼を胴体に密着させて座り込み、
   尾羽を後方上向きに上げています.前を向いている時に上げた頸とちょう
   ど平行の向きになっています.尾羽は、上記のように水かきの上に卵をの
   せ腰を落として暖める時に、体の仕組みから上がるようになるのではない
   かと思われます.抱卵中は、交代する時の短時間以外は、全く巣を離れる
                      ことなく、卵を抱き続けます.

 

  7.雛の孵化
    雛が孵化すると、殻をくわえて巣の外に落とします.抱雛をしながら座っ
   たまでくわえ、頭を上に振り上げて、アンダースローで投げ捨てたり、交代
   時にくわえて落としたりするのを見ています.殻は左の写真のように、巣の
   縁にひっかかていることも時々あります.また、孵化後1日もしない内に、嘴
   を開いてお腹の下に入れて、雛に給餌しようとします.
 



  8.孵化した雛
    産卵から約30日後に孵化した雛は目が見えず、羽も全く生えていません.
   そのため、親鳥に抱いてもらわなければ、体が冷えたり、皮膚が乾燥して
   弱ってしまいます.左の写真で卵に頭をのせている雛の嘴先端の白いも
   のは、「卵歯」と呼ばれるもので、これで卵の中から殻を割っていきます.





 9.抱雛姿勢
   雛が小さい内は、抱卵時と同様に抱き続けます.抱卵時の姿勢と異な
  るのは、翼を開きぎみして少し下げ、体も少し浮かせています.尾羽も、
  抱卵時のようにいつも上げたままではなくなります.しばらく見ていると、
  脚の踏み場を変えるように、もぞもぞと動くことがよくあります.



   10.餌ねだりと給餌
      雛は空腹になると、頸を精一杯上げ、喉袋を膨らまして、
     左右に頭を揺らしながら大声でねだります.親鳥は餌を吐き
     戻し、雛の頭を自分の口の中に入れて与えます.
      暑い日に雛が水をねだることがあります.この時は逆に口
     を大きく開き、「キュルキュル」というような独特の鳴き声をあ
     げてねだり、親鳥は喉に含んできた水を、その開いた口の中
     にたらします.





 
   11.巣立ち
      40〜50日くらいで巣立ちます.巣立った雛は親鳥と違って、茶みが
     かった羽色で、胸から腹部に白ぽい部分がよくできます(個体によっ
     てさまざまな大きさです).喉は淡い黄色で、目先が暗色(薄黒い横
     線がでる個体もあります)で、幼い感じです.巣立っても、よく巣に戻っ
     てきて、餌ねだりをします.なかなかうまく自分で魚をとれない幼鳥は、
     親鳥のいる巣に来て激しく餌ねだりを続けるので、その負担が原因で
     夫婦別れになるつがいが多くいます(巣に戻らなければ、子に見つか
     らないので、巣に近づかず、オスとメスがばらばらとなります).
      そのため、カワウにとって、「子供が育つこと」がつがい関係維持に
     とって一番危険なこととなっています.しかし、子育ての上手な個体が
     いろいろな相手との間で子孫を残すことは、その種の遺伝的多様性を
     維持する上には、非常に役立っているはずです.



 
   12.ヘルパー
      この写真の巣には2羽の成鳥(両親)と2羽の雛、さらに枝先に腹部
     の白っぽい個体がいます.これは秋に孵化した幼鳥です.幼鳥の中に
     はすぐ独り立ちのできるような優秀な子供もいます.そのような子供は、
     巣にいても餌ねだりをしない(親鳥は巣から逃げ出しません)どころか、
     親鳥の次の繁殖(この場合は翌年の春の繁殖)で抱卵や給餌を手伝い
     ます.このような個体を「ヘルパー」と呼びます.カワウでヘルパーが見
     られるのは、そう多くありません.特に、幼鳥が孵化したコロニーに長期
     間留まるようなコロニーでのみ見られます.






 13.釣り事故
    巣立ってからも、危険がいっぱいあります.よく見られるのが釣り
    糸による事故です.カワウは捕りやすい魚からを先に捕るので、
    釣り糸をつけて弱った魚を捕り、その釣り針や糸が絡んで死んで
    しまうことも少なくありません.
 




※これらの写真は1970年代〜1990年代中頃までのもので、残念ながら現在の不忍池ではカワウの羽数が
 減ってしまい、上記のような光景を見ることは困難となっています.          (文と写真:福田道雄)


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